詩|味と人

味の深みには
人の深みの宿りがある

五味、辛味、渋味
風味、器の模様、場の気配
作り手の心情、ともに食べる人の心
掴んだときの触感や、かぶりついた動作
すべてを含んで食が生まれる

だから、皿を軽んぜず、
素材を軽んぜず
誰かの気持ちに至るまで
腹を膨らませないなにかも一緒に
豊かな厚みをいただく

そうすると、味が一つ変わる
モノクロの栄養素から、人間の食事になる。

草木の造形の深みに、
心のなにかが揺り起こされて、その上に遊んでいくように

味の広がりや、深みの上に、
人の深みが、縦横無尽に遊んでいっては
未だ不明瞭なところの形をつくる

底知れず深く調和が取れていること
背後に無限の展開性があること

それが味でも、風景でも、人間でも
一つの優しい魅力へと通じている

味も、自然も、人のつながりも
当たり前の生活の中に
無数の扉を開く

触れた深さに誘われ
不思議な扉をくぐるとき

身体の奥の遺伝子に
意味より深く、意味を穿つ

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