本の向こう
窓に打つ雨が
この狭い世界の
厚みを増やす
不意に雷が光って
遊ぶような心で
単調さを破る
護られた静寂を
切り裂きながら
この緑に囲まれた
静かな空間を乱さずに
一瞬を流れる遊びを増やす
自然の一挙手一投足は
ただそれ自体に味があり
ただそれだけで意味を持つ
例えば誰かが
もし深遠な哲学を
この雷鳴と雨の中に探すなら
どんな文字よりも沢山の
本当の静寂と幸いを
ただそのままに見るだろう
誰かがもしも芸術を
この雨の中に探すなら
網目の粗さを埋めるみたいに
足りないものを足すだろう
徳を求める人が
もしも善を探すなら
ただ一言も使わずに
言葉の先を諭すだろう
血を嫌い、静かに気品に満ちて
豊かな理性を纏うだろう
もしも意味など嫌うなら
ただ一言も発さずに
ただ控えめに意を汲んで
眼前に在るだけだろう
そういう全ての方法で
この身のうちに混ざりこむ
塵芥を洗い流すもの
快いエネルギーを使うもの
どこまでも広い空間を統べるもの
味わうのはそういう理性
入り込むのはそういう感性
字の手習の手本のように
ただその美を見ては
倣うだけ
芸術と哲学の正体
知の始まりと終わり
情の美の治癒者
意が頼る静寂
必然と偶然すらも
その掌に転がして遊ぶ
ちょうど子供との
何気ない会話が
どこまでも続くように
世界が姿で表していく
暖かく大きな摂理もまた
決して途切れず
かつ離れずに
ただ遊ぶように
生活の隣にあって
ただ当たり前の偶然で
何時いつまでも
身により添う