一枚の葉が、知っていること
葉は、この命の最善を呼吸している
触れてみればわかること
動きの中に少しの不協和も持たず
優しい計らいに満ちている
人の体でこうまで良い命の通った体を
子どもの他には知らない
よく見ればこの葉も今年の葉
新しい命がもたらす秩序
限りない微笑
偶然石に手が触れる
温感と硬さのなかには
一つの嘘も入らず
触れるたびに僕の奥底にある真理と共鳴をする
初めからあったものが、実在の色を深める
窓を開けて入る日差しが、中のものの姿を鮮明にするように
人と大地の結び目が
強くて静かな理性の素が
10年でも1000年でも時を遡るように
不思議に思い出される
手に触れる一塊の石肌
無数の切れ目、一様ではない表面の凹凸
この固さと冷たさ、落ち着いた色
目で見るよりも、触れてみて
なおつながりを鮮明に知る
つながりの延長に
己の深くに知の立つことを悟る
子供の頃に、それと思わず知っていた
つながりがまた蘇る
画面の中に現れない
大地の無限の画素数で
同じ無限に対峙する為の
己の心が健康にたつ
心の命は、これほど無数の点に
確たる点に依りながらできている
言葉に囲われ
社会に諭され
己自身に惑わされて
目を閉じるように遠ざけてしまいがちな
つまらない意味の大小に囲われる前の
本然の厚み
1つの石塊に、不意に手が触れる
手の平で触れてみて、対峙する
己のなかにある嬉しい力
大事な友とある時に、無くさずに持っていたい視力
あるべき己の全身が戻る
こんなにも、葉も石も
故郷のようでいてくれる
家に帰れば心が一つ整うように
触れて心の元を知る
よく知られたものも
人類にまだ知られないものも
すべての自然な感覚を入り口に
その延長に溶け込んで
心のうちで大地のように
足元を幾度も支えるものが
ありうべき無数の未来の中から
もっとも美しい定めを招く
その瞳に、この石の呼吸が残っている
この葉の秩序が活きている
心が停滞をせず通って
健康な命が総身に満ちる
纏うように、増えたものを抱えて
また、日々の緩急を歩き始める
目には見えない幸いで
予め(何度も)染められたような道を
際の少し赤くなった紅葉から
取り込みすぎた日差しが溢れて
同じ核心の、よく似た話をしていった
世界の質感の至るところに
変わらぬ声が溢れている
小うるさい音楽よりも
ずっと優しく満ちている調べ
哲学者のどんな言葉よりも
ずっと正確で包括的な言葉
幻想だと笑うものがいるだろう
けれどもただの石塊のなか
ただ一本の草木のなかに
触れるだに溢れさせるように
たくさん詰まって、待っている
少しこちらを伺うように
出かけた子どもを待つように
緑の庭に眺め入るとき
何とは知らずに悟るもの
少し変わったその心
変わったところのその形
昼間の光が、緑色の葉に集って、
電灯のようにじんわり灯り
曇天が淡い闇を運んで、
その光の周囲を染め始めた
明るい命の印のような昼の光と
穏やかな気持ちを運ぶ闇が重なり
幾重にも一瞬を染めあげて
それを直接、身につけて飾るような
事物の仕草のどれもが
全き微笑のような
尊い智の結晶のように
確かな標となって
揺れている
風や時に潜む呼吸のように
満ちているものを描く