橋の上で

石橋を渡れば
曲がった清流に
日が照り輝いて
重なり合う木々が
幾らかを隠し
粋を心得ている

すれ違うひとが
何かいますか?と聞く
何もいないけど見ています、と応える
また別のひとが、車で通りがかって窓をあけ、
生物の多様性が見えますか?と聞く。
きっと、いっぱいいるでしょうねと、
あまり気のない返事を返した。
春の気配の感情の中で
人間の側の感情には、まだ戻りたくなかった。

たいていの人は
何かがそこにいないと、橋をのぞかない。
こんなにも、綺麗なものが散らばっているのに
ダイヤモンドの山ならば、目をやるはずなのに
ダイヤモンドよりも綺麗なものを、
見過ごして、この橋をなんとはなしに渡る

意味のあるものしか認めず
意味なく観ることにすら
その意味を探そうとする
 
虚室は白を生む
空白に満ちる光は
ひとが描ききれない
情操の遠方までも描く
色彩を忘れたひとに
色を教える

眼前の色には真実の種
いずれ理性になり
上手な笑顔になるための
まだなんの意味も持たぬもの
それゆえ聡い宝物

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