霧に沈む街

そとがあんまり真っ白で
階段の向こうに四角く切り取られた空は
遠くにあるのか、近くにあるのか
見ていてわからない

なにが起きたか知りたくて
窓を開けて外をのぞくと

白い空が山まで降りてきて
街ごとすっぽりと包んでいた

見通しの悪い霧の海にのなかには
清澄で寂かな気配が漂っている

組織に、この精神の一部を
貸し出していなければ

きっと自由な精神は
言葉になる前の言葉を
大いなる広い静寂を
味わって楽しんでいただろう

そんなときに、まことが宿る
繰り返しやどせば

霧や風や雲や山が、
そうして街の風情が
僕らをひとへと返す

黄昏にすら
朝もやにすら
心を残さず

ひとはまた
ひとと修羅のさかいを
あいまいに乗り越えてしまった

あるときは木の葉のざわめきに
あるときは朝霧に潜む暗黙に
その身土を持っている、巨きなもの
今日も眼前に見過ごされながら
ものいわず 僕らを見ている

昔誰かが
やっていようと、やるまいと

ただ何度でも 新しく
覚者の意思は
この土塊にいま宿る

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