東京→京都

東京にはテンポのいい軽い時間が流れている
京都にはゆったりと綿密な時間が流れている
情操を深めるものはここに
風の吹き方ひとつの中にある
それは半ば自然で半ば意図されたもの
町屋を作る木や土の空気
庭の白砂と木々を通り抜けて、
海を抜ける風が水蒸気をえるように
生きた心を含んだ風になる

それは平静さを知る風
情の一つ一つをつないで
また流れさせるもの

ホントの先端は
先端など見向きもしない
ある原始を含んだ営みの中に
触れるもの、その場所に感じるものの随所に
尊い心の種を散りばめた
ある粋で高貴な試みのなかに

それは精霊のような
分子の大きさの心で
大気のように空間に満ちる

コンクリートとアスファルトの町にないもの
その中でどれほど人が作為しても、似て非なるもの

しめやかに触れる人に満ちて
たくさんの土のように泰然と足元を支え
吹き抜ける風のように重さに縛られない

そういう心の果が、
この庭に帰して座せば

おいしい風の中
散りばめた花崗岩と、
紅葉の緑の上に
目をやれば、
すでに聡いものの種が
星のよく見える夜の全天のごとく
舌に広がる抹茶の如く
随所に満ちている

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