味と人

味の深みには
人の深みの宿りがある

五味、淡味、そして無味、
風味、器の模様、作り手の心情
ときには、手掴みの食感やかぶりつく動作、
それぞれが黄青赤の画具として、描いた深さの一食がある

だから、皿を軽んぜず、
素材を軽んぜず
作り手の気持ちに至るまで
腹を膨らませないなにかも一緒に
豊かな厚みをいただく
そうするともっと美味しい
モノクロの栄養素から、人間の食事になる。

草木の造形の深みに、
心のなにかが揺り起こされて、その上に遊んでいくように
味の深みの上にも、
その人の深みが、縦横無尽に遊んで
未だあるようなないようなそれに、ついには実在を与える

底知れず深く調和が取れていることや、
背後に無限の展開性があることは
味でも、風景でも、人間でも
ある一つの優しい魅力へと通じている

味も、自然も、人のつながりも
当たり前の生活に
古来からある という合言葉の
当たり前の深さがあれば
この遺伝子のなかに
意味より深く、意味を穿つ

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