漫画の世界を見渡すと
世界の分子が薄すぎる
灰汁を減らして、
美味しさだけを残した様な娯楽だ
隅々まで見ても、
ほんとの世界よりも圧倒的に軽い
線の間はただ白くて、なにもない。
だからこそ、肢体を投げ出して楽にする様に
精神を投げ出して、息抜きにもなるけれど
本当の意味の癒しにはなりえない
下を通り抜ける人に、
葉の透き通った緑をみせてくれる夏の紅葉のほうが
ずっとしずかで豊かな表情をみせている
世界をうけとる重さのために、
人の頭の中に、雑音のようなチリが積もってゆく。
それを払うために、軽い世界もまた意味をもち始める。
けれども軽い世界から、
本当の重たさの世界に帰ってくるとき
実は1番、安心できるのだ
いわば、テーマパークから
ほんとの我が家に帰るのだから
漫画もたまには面白い
けれども世界が漫画じゃなくて
厚みと色彩と気配に満ちていて
日々新しい物語をくれる
それを見落とさなければ