色彩の美 

壁や服を染める単調な色
情のあるものが、表面から弾かれて
息づくことを殺している
目をやれば情感のなかに沈潜し、
息をつぐべき人の心も
単調さに染まり、
道を失う

時とともにそのしめやかな印象を変える
その千万の色彩に彩られた心が
人の心を得るときに、美しく染まる

色彩の因果を忘れてはならない
世界と人のふたつが染めるものだから

色彩の文化は
見る人の精神の色彩をも増やす
その人に因果を知られぬままに。

生活に自然の気配を巧みに移しとる
衣服に、建築に。小物のなかに。

目に映せば不思議に
心のありようを悟るように
日常の色彩と質感にのせた
静かで純な知性を
情の色彩の粋を垣間見る

そういう文化を
求めてゆかなければ

風や虫に揺らされた、花のみが知っていること。
広い空間を一面に染める、草の上に映りこむこと。
その日の空が、雲を使って描くこと。
季節に香る風のなかに
時を超えて、幾度も始まりをもっていること。
外を走り回る子どもらが、知らぬうち全身で語りつぐこと。

なにかの拍子に、
自然や時の命が現れて分かる
そんなふうに、
常の食事をするように、
そういう味を、
かかさずに生きよ

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