オレンジの雲

遠くの空の向こうが、変にシカクに橙色に明るい
それが、分厚い雲に切り取られた、太陽そのものだと気づくのに少しかかった
控えめに、ずいぶん静かに空に馴染んでいる

南天する真昼の太陽も好きだが
こうして沈みかかった太陽の色は
穏やかに優しく、
いつもよりすこし近い場所にあるようで
不思議に親しい
香りが思念を進めるように
僕のうちにねむるように沈黙していた情を多弁にして、
この一時に誇らしい意味を与える

雨粒が草をうてば、それらしく揺れる様子はいつも懐かしい
空の中に、草の上に
いつも芳しい情への門がひらいている
楽しめば、味わえば
それはすでに是
あなた自身の姿に映る
自足したもの 肯定されるもの

同じ姿をしていろ
同じ時を過ごせば
難しくないこと

単純な僥倖を
言葉なくとも
主張なくとも
だれひとり知らずとも
ゆめゆめ忘れ遠ざけるな

車を走らせ
フロントガラス越しの空を眺めながら
一瞬そんなことを考えていた

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