曇天の夜街

豊かな笑顔もこぼさずに、
眼前の作業に明け暮れる日々
たまに同僚と交わす事務的な会話のほかに
たいしたものもない時間

いわゆる仕事をこなす大人になって

交差点の信号待ちをしながら
ふと、子供の頃の僕はどうなりたかったのだろうかと記憶をたどる

漠然と、自由で豊富な理性になりたかった。
すべてを負える、すべての色の
それは子供本来の
否、誰もの
ありうべき形

命はもっと
体温をもち脈打って
彩りに富んだ、楽しいもの

そういうものの続きを、描きたかった

抗って、忘れないようにして
それでもやっぱり、なくしたりして

この妙に明るい街を歩いている

台風の近づく夜
流れていく灰色の雲に
じんわりと己の今を重ねる

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