2時間、丘の上にいた
型で体を動かした
整えられた日差し
皮膚を撫でる風
木の葉のざわめきや
遠くの人の声
昼の全部がつくる白色音
少し疲れてカフェにはいると
ある一つの洋楽の旋律が、
なにかを邪魔をした
広々とした自由な精神
的確な理性のありか
白色音のなかで
遊んで
洗われて
備わるものが
目に見えず言葉にならず
それでも確かにあった
子供の頃に知っている
空気の味
遠くの風景の味
時間が色をつける
自然物の情景
どっぷりと広い
時間と空間の中
単一の意味の鎖を離れ
そのなかに、心を遊ばせて
好きなままに行かせる
ある楽しくて高貴で
色で言えば黄色いような安心が
頭の後ろに流れてたまり
ぼくの存在に表情と
目の奥の落ち着きとを与えていた
カフェに流れる音楽は
ただ一つでしかない旋律は
そういう理性にずいぶん遠く
囲われた部屋の中
ぼくはついさっきまで手にしていた
幸せの形に思いをやったりしていた
最高の時間は
ひとの手には収まりきらない
ただどっぷりと包まれて、
中で過ごして楽しいもの
あたかも海を泳ぐ魚は太らないように
外にいて
視線も体も気持ちも、
向かいうる全方角のなかで遊べたら
その時間に培われた心には
妙な油はつかない
四角い部屋のなか
光は時の色を失い、
見やる距離のなかに宿る感動は失われた。
つづいて表情をなくすのは、
はじめに目。
そして体。
ついには理性。
ある囲いの中で
養殖される人間になるな。
形のない時や風のなかの
形ある緑や大地のなかの
声ならぬ声
至高のものの片鱗
太陽と砂埃がみせるものも美
小石や根っこでごつごつした
不安定な足場は
ぼくの中に住んでいる
動物的ななにかと遊んでくれる
そののち、なにかもまた、
沈黙のうちに同じ至高を語りだす
一つの理性を物語る
物語の中で生きて
その口ぶりを真似るように
内奥に同じ声や言葉が
親しい場所をつくれ
時のあわいを見て
陽の光が映しだすものを喜び
夜に休息し
この大地の呼吸と
同じ呼吸をしていろ
そうすれば
あるべき声が聞こえる