京の月

遠いあの地でみた月と
空にあるのは同じ月

違っているのは大気の濃さ
人や草木のいぶき
生暖かい風に
それらの意思の混ざり合った気配
包み込むように、迫るように
僕の周囲を 埋め尽くす

折しも満月には 薄雲がかかり始め

その完成した摂理は
僕の立つ地上にまでおりてきて
その気配が僕をなお培う

ある不思議な調節は
この眼前をゆく夜の川に満ち
月を浮かべる天空に満ち
川辺の草の茂みにもみちる

大地の呼気があたりを漂う
熱気のような
過不足のない純で正しい理性

季節の香りとともに
ふと懐かしい思い出がよぎる
子供の頃にこうしていたと言う思い出
自身の中のより清浄であった頃の記憶

豊かな世界と
豊かなこころの
正しい生の記憶

暖かで連綿とした命は
ふたたび僕を培う
耳を傾けるようにして、見ている
全ての幸の
足したり引いたりのわざとらしさのない
そのほんとうの形を

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