コートと和装

冬 コートの中に
シンメトリーや直線、
単調な色をかさねる
西洋流のクールと

すれ違うひとの和装
万の色や風合いを重ねる和柄
自然の美を描く線や色が
絵の上から常に美の現象の追想をかさねる
苔むした石積みのうえに、
木々が影を落として、色を深めるように

日本の美に関する感覚は
西洋のそれよりも
自然そのものがもたらす
ある印象への回帰をふくむ

それは結局西洋の求める理想でもあるのだが
現代では、あまり知られていない

複雑なものの中に
赤子のころ単純に知っていた
真実のもつ全きよさがある
それを描こうと希求した複雑さのなかに
心の安らぐ
本当の華がある

人を乾かせたり
奢らせたりせずに
ただ、深めるだけの
ほんとの華がある

人の色形に拘り
ときに人の本性すら歪める
それがこの時代の服飾

四季の深さに見入るような
ひとの精神の風情までも色に重ねて着る
それが古くて新らしい理想の服

古人が目指したのは
そういう服飾

ここに
この時代の欠落が
端的に示されている

向かうべきところを
静かにさし示している

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