あ、浮いてはる
泳いではるではる、木
気持ちよさそうやな
たぶん喜んではるわ
あの浮いてる木
そんな、6歳くらいの子の話
広大な白雲と
どこまでも続く湖面
誰でも皆一様に
さっぱりと洗われてしまう
ぼくらの気持ちを余さず受けいれて
それでも向こうのほうが
収まりきらないほど広くて
だからこうしてみつめていて
入り込んでいて
飽きずにたのしい
湖岸の波打ち際
波の間で
はしゃぐ犬も
佇む親子もたのしそうで
このだだっぴろい
うつくしいものに
しばしこころをゆるした
湖岸に座して向かい風
湖上の空気のおもさがある
波の音に
入り込めば
またそこにみえる新しい世界
全きものの叙述を
知らないままで知る
言葉でも数学でもなく
それでも正確に知る
そののち
残されるものこそ
ひとの尊厳
精神の円環