うまい夕飯を食べた
腹から頭を聡明にさせ
万の言葉を生み出すタネを
1つの心のたねをまく
それは喫茶店の隅の薄暗い影に
銀のスプーンの上にも、
一瞬載っていたりする
見回せば必ず情があり
みえぬときには己の貧相を疑う
立ち返れ
様々に思い、深く省察させるのは
こころに映した世界の化身だ
直に見たり感じること
それは入り口
終着地はいつもある暖かい場所
今日も世界の散積する場所
1つの調べ
夕闇の静寂が美しいものの分子を運んでいる
空や草木の囁きが血管を巡る
人の心を映しこむ草花も
黄色い梅のどこまでも甘くて優しい香りも
見る人を飽きさせない汪洋たる川の流れも
いつしか、この血脈をつくる
悲しく見せるのでも
楽しく見せるのでもない
見る人が色をつける 白紙の精細な景色が
人に色をつけることを
そして色をもつことを教える
折々の景色の余りあるもののなかに
色をつけるのは己自身
色ぬりを忘れたスクリーンの世界には
色を置く絵描きもまた不在
色をもつ人間がまた一人消える
悲しい哉
にんげんの不在
入れ物だけのこして飢餓
命に生まれて、機械のようになって
飢えているのは人間
寂しいのは、優しい顔をした幾多の詩人たちが、
この時代の節目に、音もなく消え去っていったこと
風の温感や、触感が語る 天然の歌
夕暮れの色合いが連想させる、豊かな微笑
ひとの目や顔に
宿るべき豊かなもの
ある色の感情は、すでにある言葉ではなくて
ある色の中の そのままの気持ち
それが見ること
生きること
折々の植物の息吹のなかに
音も形もない 己の真を見よ
静寂に包まれて
微笑みをこぼせ