夜空を黒雲が流れていく
巨大なものが
音を立てずに
誰にも気づかれないあいだに、
流れていく
月明かりに先端が映しだされて
刻々と一部だけが 現れては消えていく
あの場所に昇って見たら
こうして歩いているぼくは
きっとダンゴムシかなにかが
歩いているのを見るようなんだろう
悠久なものの影が
こうして頭上に現れている
僕らはたいてい見過ごしながら
やはり地面をはう昆虫のように
目の前の世界だけを 一心に見すえて
歩いている
ときどき、悠久の存在感に触発をされて
正しい世界の側に ふいに立ち戻っては
せめても人間らしく
月明かりが照らしだす
あの黒雲のように
美しい理想にそってありたいと願う