空の青さも川のせせらぎも
大木の呼吸も、覚者の善だ
私たちの心象に映る時
自然は私たちを通じて
その本分を語りだす
私たちは自分の中から
それらの清い声を聞く
本当の幸いの形が
これから削り出される木像のように
あらかじめ世界のなかに息づいている
それらをふだん、目にし、味わい
それらの中で、笑い泣き
そうして気づかず
一部になる
自然は救うものではない
救われ育まれているのは私たち
ただ己の真実を
己自身の矮小な言葉で覆い隠してしまわないための
言葉になる前の 神聖なことばだ
ひとの理想は
それの面影をまねるだけ
時代や国の好みを、ある程度反映しながら
けれどもその真実への帰趨において
同じままの性質をもっている
ある時代の、ある国の、ある言葉のひとが、
抱いたものと同じ理想が、
国と言葉と時代を超えて
僕らの細胞の中に
ずっと生き続けている
だから ただしい記憶を呼び起こすものに
ぼくらは身を委ねよう