雨が降る
隣家の屋根の上をチロチロと
光を反射して、絶え間なく流れ落ちていく

その表情は、いつも会いにいく河川のそれと全く同じに見える

全然別の、屋根の上に、
それも偶然の中に生まれた流水のなかに
時には神が住まうものとしてあがめられてきたあの川と、同じ姿がある
そのとき僕は、なにか新鮮な発見をしたような気持ちがした

まるで、この世界を包む優しさのように
どこにでも顔をだしては、僕たちに安らぎと本当の栄養をくれる

ゆっくりと、途切れずに
いつも少し違いながら、それでいていつも味わいのある顔をみせながら

人間がこういう味のある顔をするには、
よほどの仕事以外に放蕩する、余分な時間がなければ成り立たないだろう
効率と時間にせき立てられる現代
ひとの表情からは味わいが欠けていく

ぼくも、そうした人間のなかに埋没しながら
あらがいながら
ときたま、水が流れる様を見ては、理性のほんとうを、思い出す

浄化され 色濃くなる
丁度、よい人に感化されるように
水を見るうち、どこまでも静寂ななかに、そういう変革がおきる

また少しだけ、理性のなかにたまったゴミを、洗い流していく
水が、嘘を洗い流していく

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